泰松館 - 大正時代の家 -
100年前の棟梁が感じたこと、考えたこと。
現代の我々が感じたこと、考えること。
そして、未来の人々に回想してほしいこと。
Location: 神奈川県茅ヶ崎市
Client: Creative Space Hayashi
Construction: 木ごこち工房
Plastering: 村瀬左官
Building Type: Guest house / Artist residence
Current status: Completed
Budget: Undisclosed
Time scale: 2022- 2023
泰松館の歴史は古く、1923年大正13年に建てられた。神奈川県茅ヶ崎という南には海、そして北には緑豊かな公園を臨む市内にある一棟貸しの民泊、アーティストレジデンスである。本プロジェクトの改修計画および全てのスペースにおけるインテリアデザイン、スタイリングの一部が我々に委ねられた業務であった。
このプロジェクトのスタートは2022年の夏。茅ヶ崎駅よりサザン通りを抜けた徒歩圏内にあり、閑静な住宅街に立地する個人邸宅が敷地である。大正時代の趣をを受け継ぎながらも、モダンなエッセンスが入り混じった空間を考えてほしい、という相談を受けた。国内外の芸術家をターゲット層として、街に住んでいる人たちにもその空間を楽しんでいただけるような、小さくも新たなコミュニティ形成を目指した計画が始まった。
民泊のコンセプトとも言える「時間の流れ」。それを実現するために、昭和時代に改築されたエリアを減築し、大切に受け継がれてきた空間を清掃・修繕し、長期滞在が可能な民泊兼アーティストレジデンスへと丁寧に検討を重ねてきた。
外部切断部の大壁には独自に製作した焼杉を用いて修繕。エントランスおよび外周部においては、家屋全体の印象を作り上げている掻き落としの左官を用いて修復を行なった。外壁や内装で使用した左官には敷地内の砂を採用した。外観から見える建具のラインは家屋のヒューマンスケール(大正時代)を基軸とし、外観として落ち着いたリズム作りだすと同時に、廊下や室内ともスケールを合わせることで、室内外の一体感を作り出している。また、様々な左官の質感が表現するコントラストからは、独特な雰囲気が作り出されており、あたかも昔からあったかような佇まいが生まれている。
キッチンエリアでは土間の要素を取り入れ、屋外の自然豊かな景観を取り入れるよう計画した。また、犬走りを設けることでランドスケープと室内の繋がりがより身近に感じられる。テーブルには研ぎ出しを用いることで無機質ながらポップな雰囲気を表現。そして、防水加工を施すことで機能性とリラックスが共存する家具を新しくデザインしている。また、アンティーク家具収集をされている施主様が設置した特徴的な家具や、ペンダントライトは部屋に日本的でありながらコンテンポラリーなエッセンスを加えている。
時間の流れを調和するという計画意図があったとはいえ、何が起きるか予測がつかない古民家の改修において、実際にそれを作り上げることは簡単なことではない。さまざまな視点からケーススタディを重ね、現場にて職人との緊密な会話によって2023年11月にお披露目となった。昨今において、古民家の維持と存続の意義は所有者にとって大きな負担となっている。そんな中、施主様のご英断により維持されることとなったこの大正時代の家を次の時代へと受け渡す計画へ関われたことを大変嬉しく思っている。
神奈川県丹沢産の杉を炭化
Development
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時代に関わることを考える。
茅ヶ崎市の「泰松館」古民家改修の記録をまとめたノートを作成しました